CASESTUDY

事例

M&Aによる会社の売却を検討されている皆さま

① 投資回収1、旅館業・静岡県

M&A手法

株式譲渡により会社の全部売却。銀行借入金は譲渡対価の一部で完済。
会社をそのまま売るため株式譲渡

背景

旅館業は好調で一定の知名度もある高級旅館。社長様が高齢化し80代になり、後継者もいなかったため、事業承継による引退を模索していたところ、中国上海の投資会社が日本での迎賓館として買収を希望され、交渉の結果、株式譲渡によるM&Aが成立。

M&Aで解決できた要因

手続きは株式譲渡契約だけですが、会社が保有するすべての資産負債が対象となるため、調査(財務・不動産デューデリジェンス)と会社資産・債務の調整が必須なためその対応が必要となります。 実際はそのまま売ったのではなく、個人オーナー企業のため個人資産・負債、簿外債務などが含まれており、これらを事前に整理し純粋な旅館事業のみにしての売買としましたが、このような事前整理には買い手との事前了解が必要ですし、調査結果に基づき整理をしていくことになります。 株式売買なので借入金もそのまま承継してもらうのが通常ですが、このケースでは社長様の完全リタイヤが目的のため連帯保証も解消させるように売却対価の一部で銀行借入金も完済しています。

結果

株式の売却だけでなく、退職金を絡めオーナー経営者の生活資金も確保されましたし、買収企業側の意向で旅館の運営に関与を続けることとなり、その間の報酬も得られることになったので、経営の責任を考えることなく運営にだけ専念できるのでとても有意義なご様子でした。

② 投資回収2、パチンコ業:東京都

M&A手法

会社分割によりパチンコ事業を売却し、その売却金で金融機関の借入金返済と社長様一族のその後の生活資金を確保。 吸収分割をしたのは許認可を円滑に承継するためで、パチンコ業界では一般的。

背景

パチンコ遊技人口は減少の一途を辿っていますが、更に射幸性が大きく下がる新基準機への移行によりパチンコ店の集客力が大きく低下しています。この新基準機への移行前までが業績のピークでその後は更に収益が減少すると考えられただけでなく、比較的会社の借入金が多く財務状況は決して良くなかったため仮に新基準機を導入し遊技機を更新するにもその資金調達面にも不安がありました。 そのためこの時点でM&Aにより売却金を得て投資回収をすることにしたものです。

M&Aで解決できた要因

パチンコ会社のM&Aとしては過去3番目の規模の大型M&Aとなりましたが、複数の候補先に対してパチンコ事業の事業性や資産負債状況をデューデリジェンス形式で提示しましたので、会社の収益状況・財務状況がいち早く理解され購入の意思決定は早かったと思います。

加えてパチンコ本業と関係のない事業や割高な条件で取引している取引業者等も洗い出し、これらを切り離すことで現状よりも高い利益を上げることができることを買い手企業に示したことで、売却金がこちら側の希望に近いところまで上げることができました。 個人オーナー企業のため個人資産・負債、簿外債務などが含まれていますが、これらは会社に残し旧会社の中で売却・整理を進めることになりました。 単に会社分割といっても本業と関係のない資産・負債を切り離すことについて買い手との事前承諾を得なければなりませんが、これもデューデリジェンスの結果に従って進めました。 M&Aでは売り手側としても積極的に調査し事前に対策を練っておくことで、交渉を主導することができます。

結果

社長様は先代から引き継いだ多額の借入金が一掃されただけでなく、退職金を絡めオーナー経営者の生活資金も確保されましたし、別会社の経営に専念できることになりましたのでとても安堵しているご様子でした。

③ 債務整理1、スポーツクラブ運営・栃木県

M&A手法

第二会社を設立し、第二会社にスポーツクラブ事業を吸収分割させ、その譲渡金で金融機関と和解。 吸収分割をしたのは許認可を円滑に承継するのと同時に、過剰債務を旧社に残し、第二会社と切り離すため。旧会社は特別清算させ過剰債務も一掃。

背景

甘い市場調査の中で実施された過剰な設備投資だったため、スポーツクラブをオープンした直後から赤字で、その後も慢性的に赤字が続き、自主再建が困難なほど資金繰りが困窮していました。そのため債務整理のためにM&Aを実施し譲渡金をもって金融機関と交渉しました。

M&Aで解決できた要因

本件で難しかったのは第二会社方式であることにつきます。 実質的には現社長がそのまま第二会社でも経営を継続することになるのでそのコンプライアンス上の問題解決と第二会社にしてでも債務を減らし事業を存続させることの合理性、それと第二会社の方での資金調達であろうと思います。

交渉は長期に及びましたがメイン銀行もその他の金融機関からも第二会社方式への同意を得ることができ、最終的に旧社を清算(特別清算)して過剰債務も一掃されました。 そのため社長様も自己破産することなく債務整理ができています。 また新会社の方は新規に銀行から資金調達し、その調達資金をもって買収資金と買収後の運転資金を確保しました。

第二会社が買収資金を用意できなければそもそも金融機関と和解することもできません。 新規の金融機関から買収資金を調達した訳ですが、何も取引のない会社の収益性を理解し融資してもらうにはやはり第三者が入った事業性への説明がいると思います。

結果

債務が大幅に減らせたことで負担も解消し、その後も堅調に営業継続しています。 その後5年経ち、オープン後10数年経過したスポーツクラブの大規模なリニューアルを実施するため、改めて設備資金を調達することができ、その後は奇麗に一新された施設とともに集客も増え、リニューアル資金の返済も順調に進んでいます。

④ 債務整理2、食品製造業・宮城県

M&A手法

債務整理のために新会社に事業譲渡して営業を継続。その譲渡対価を金融機関への和解金に充て、旧会社は破産させ過剰債務も一掃

背景

食品製造業は原材料の高騰により原価が悪化しやすく、またプライベートブランドやOEMを展開している中小企業が多いため価格転嫁ができる競争力に乏しく、収益力は脆弱です。これに加えて先代社長が長年放漫経営を続けた結果、過剰債務の状態に陥り、借入金の返済もできない状態でした。 赤字の状態では資金繰りもままならず、そのような状態が数年続く中で銀行5行はすべて撤退し、債権者はすべてサービサーとなっていました。 そのためずっと返済を強要され続け、風評が広がる中で一部の取引先からは現金取引を打診されてますます窮境に陥っていきます。 このままでは資金調達どころか自主再建も困難と判断し、スポンサー探しと新会社への事業の移転準備に着手しました。

M&Aで解決できた要因

本件で難しかったのはスポンサー探しとスポンサーからの売却資金確保であろうと思います。スポンサー交渉を決めたのはD社の潜在的な収益力と社長の強い決断でした。
収益構造を調べた結果、D社独自の商品には魅力があること、過剰債務が一掃されれば黒字転換できる収益力があり生産や営業体制を見直すことで収益構造を転換しつつあることを第三者の目線で説明し、スポンサーから過剰債務の一掃を条件に資金提供するという条件を取り付けました。
このような早い判断を促すには業界に精通している必要があり、スポンサー探しは始めから業界と関係のある事業会社に絞って探しましたが、これも支援決定が早まった要因と考えています。

結果

スポンサー探しの結果、幸運にも半年ほどでスポンサーが見つかり、スポンサーが運転資金を供与する条件で新会社へD社の事業を移転させることができました。
過剰な債務は旧会社に残したため、当然サービサーは異議を唱えてきましたが最終的には裁判で解決することができました。
M&Aにより健全化したことでかえって取引先の信用が高まり、さらに主力商品を中心に強気の価格改定も実現したため高収益企業に変身を遂げています。
そのうえで老朽化した工場設備の生産能力を増強させるため新工場も完成し、その資金も銀行から低利で調達することができ、借入金の少ない優良企業としてその後も最高益を計上しています。

会社の資金調達を検討されている皆さま

① 建設業A社・栃木県

建設業の背景

建設業界は1990年代以降一貫して公共工事の予算縮減が続いており、特に土木工事主体の建設業者は毎年完工高の減少に苦しんでいます。
このため民間建築分野に進出する業者も増えたことから、民間建築分野も過当競争が激化しています。
A社もそのような環境の中で売上を確保するために民間建築工事の大型案件で赤字受注にまで走ってしまい、結局大幅な赤字を計上している状態でした。
当然銀行からは債務超過を疑われたため、銀行からの依頼で当社で調査をすることとなりましたが、その結果、実質債務超過(貸借対照表上では資産超過なのに、実態は債務超過の状態)であることが明らかになってしまいます。

資金需要

A社は土木工事から脱却し、本業(建設業)で新しい収益の柱を育てたいという社長の強い意志の下で、大型木造建築工事の開拓を進めていました。 もともとA社の創業当時は木材業でしたので、もともと持っていたノウハウをさらに発展させることにした訳です。
実際に営業活動を進めていくと、木造建物の「優しい風合い」や「温かみ」「癒し」といった特性に需要があり、高齢者施設や幼稚園園舎などで受注が拡大しつつありました。一方でこれら建築物は補助金の関係もあり、工事代金が完成後数ヶ月待たないと入金されず、工事期間中+3ヶ月くらいは自己資金で賄わなければならず、皮肉にも受注が拡大していることで慢性的な資金不足に陥ります。

結果

A社は実質債務超過にありましたが、それでも売上拡大で急増した運転資金を銀行から調達でき、社長は安心して受注活動に専念することができました。その後も太陽光発電など次々と新規事業を立ち上げていきますが、その都度、円滑に資金調達ができ毎年のように売り上げが拡大し最高益が続いています。

勝因

一つ目として、過去の赤字受注の経験もあり、工事利益確保のため効率化を地道に進めた結果として、経営改善計画書で示した収益改善が順調に進んだことがあります。
新規分野開拓のタイミングでこれまで銀行と合意していたその計画書をあっさり破棄し、新たに事業拡大のための中期経営計画に切り替えました。そしてその計画書で新分野の成長余地などを客観的に示しそれに銀行が納得したことによります。新分野開拓は思い付きではなく、客観的合理的な説明力が備わることで初めて銀行もその将来性を理解できるようになります。

② 鉄鋼業B社・埼玉県

鉄鋼業の背景

鉄鋼業界は、これまでオリンピック需要が続いたことで都内を中心に大型建築物が盛んに建てられ好調でしたが、特需がなくなったことで急激に需要が縮小しており、さらにコロナ禍の国際的な鉄骨相場の高騰により建築コストが高騰し建築工事が減少したこともあって売上急減している業者が増えています。 B社は過去に先代の社長が作ってしまった債務負担のため、表面上債務超過(貸借対照表上での債務超過)にありました。

資金需要

B社はそのような中で、一貫して大型建築物ではなく中小型に特化し、機械によるオートメーション化ではなく手作業での丁寧な製品づくりを行っています。 現在このオーダーメイド型の対応が評価され売上が増加し続けています。 その反面、この売上増に伴う鋼材(原材料)の購入・大型工事が増え仕掛品が増加するなど運転資金が急速に不足していました。

結果

B社はもともと債務超過により銀行から返済支援を受けている状態でしたが、この不足する運転資金を追加調達でき、社長は安心して受注活動に専念することができました。加えて新工場の建設資金も調達できることとなり、更なる増収増益が期待されています。

勝因

一つ目として、中小型に特化した丁寧な製品づくりは経営改善計画書で謳っている施策ですが、これが計画どおり順調に進んだことでB社の評価が高まったことによります。これは 現在需要縮小に伴い業者の選別化が進んでいる中で、競合他社より高い収益性を上げていることが明確なため銀行の評価に繋がったと考えられています。

二つ目として、キャパシティを超える受注量に対応するため工場新設をすることとした際に、銀行と合意していた現計画を破棄し、新たに設備投資計画を提示し、銀行が納得する収益向上可能性などを示せたことによります。 設備投資も思い付きではなく、客観的合理的な説明力が備わることで初めて銀行もその将来性を理解できるようになります。

③ 飲食業C社・東京都

飲食業の背景

飲食界はコロナ禍による大打撃で売上が激減しており、雇用調整助成金や休業補償で何とかその赤字の一部を補っている状態なのはマスコミが報道しているとおりです。

資金需要

C社もそのような中で、コロナの影響が大きい居酒屋など大きく赤字転落したため、赤字店舗の閉鎖を急いでいます。運営を継続している店舗でも雇用調整助成金を活用しつつ最小限のシフト調整など人件費の抑制に努めていますが、それでも毎月赤字の状態で、2期連続の赤字決算となっています。

結果

コロナ制度融資を最大限に活用し、信用保証協会の「コロナ制度融資」だけでなく、日本政策金融公庫の「資本性ローン」も最大限活用し、このまま赤字が続いても当面3年は営業が継続できるだけの資金を調達することができました。 加えて赤字決算でありながら、テイクアウトの店舗を出店することとしましたが、出店資金も調達でき、これまで取り組んできたコスト削減による赤字縮小に新店がもたらす利益が加わり、緊急事態宣言が影響している今期であっても3期目にして黒字転換できる見通しが立っています。 現在ではコロナの影響が少ないテイクアウトなど小型店をターゲットにして新たな店舗出店を検討中です。

勝因

コロナ禍による融資制度があるため、一般的にここ2年間は資金調達ができやすい環境にあります。 ただし将来の収益改善見通しを誤り、例えば2年で黒字回復するとしていた場合、3期目も赤字が続くと急激に資金が枯渇します。銀行は黒字回復するまでの最小限の資金しか融資しないからです。

当初から保守的な収支見通しを立てることが肝要です。コロナが収束すれば業績も改善することを合理的に説明して最大限の資金調達をするのです。 結果的にC]社は黒字転換が予想より早かったため資金は余剰となりました。 仮に見通しを誤った場合には当然赤字により資金不足に陥りますから、2回目の追加融資が必要となります。 現状はコロナの影響がいつまで続くか予測することは困難なため、経営改善計画書を作成することは困難ですが、そうであっても収益回復力を合理的に示せるだけの資料が追加資金調達には必要です。

資金調達は競争です。 他社も資金調達に殺到しています。であるからこそ他社とは違う説得力のある資料を示すことが銀行担当者にとって優れた会社と映り、円滑に追加資金調達ができるようになるのです。

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